看護過程はナースの商売道具
シェフにとっての包丁、美容師にとってのハサミと同じく、ナースにとっての「看護過程」は、プロとして活動する上で必須の商売道具。
それがないと仕事にならないけれど、それを持っているだけでは意味がない。
どれだけ高級な包丁なのか、どれだけ有名なブランドのハサミなのか、そんなことはお客さんには関係ありません。お客さんにとって重要なのは、自分に届く、料理だったりヘアスタイルだったり、それらの商売道具を使った「結果」の部分。
お客さんに最高のハッピーを届けるために、商売道具を手入れして、商売道具を使いこなす技術を学び続けます。
看護過程も、同じ。
看護過程を展開できる、実習記録に看護過程を展開した内容を書くことができる。そのために勉強したり、指導者からアドバイスをもらったりするのは、商売道具を手入れしたり、使いこなす技術を学んでいる部分にあたります。
どれだけ心を込めて手入れをしようが、どれだけ時間をかけて勉強しようが、どれだけ看護過程の試験で良い点をとることができようが、実際の患者さんを目の前にして、必要な看護を、必要な形で提供することができなければ、それは「よい看護」ができたとはいえない。そんなことが起こります。
看護過程を理解すること、看護過程を展開できることは、患者さんにとって必要な看護を行う上での大きな助けになります。
ただ、ゴールはそこではありません。看護過程は、ナースにとっての商売道具。それを使いこなした上でできあがる「看護」、患者さんにとって重要なのは、そこです。
患者さんのハッピーのために、商売道具を手入れし磨き、技術を学び続けるのです。
実習記録に何を書くのか。
ずれていないか。
一発でオッケーがもらえるか。
なんどもやり直しにならないか。
気になるところですが、実習記録で、ダメ出しなく一発オッケーがもらえることと、患者さんに必要な看護ができることとは別物です。つまり、商売道具を持っていることと、その商売道具をお客さんのハッピーのために使いこなすこととは、別だということ。
ただ、別物だけれど、商売道具をどれだけ大切にしているか、この姿勢は不思議と結果としての看護にも、表れるもの。商売道具を大切にできるナースは、患者さんも患者さんのご家族も、仕事仲間も、もちろん自分の身近にいる人たちのことも大切にできる人、そんな気がします。