看護アセスメントの「解釈」って何を書くの?
こんにちは、ローザン由香里です。
看護過程の参考書などでは、解釈について「情報の意味を考える」と説明されていることが多いです。
アセスメントにおける「解釈」の意味がわかった今、確かに、解釈って「情報の意味を考える」ってことなんですよね。この説明が、いちばんしっくりきます。
ただ、解釈をよくわかっていない時期に、この表現で説明されても、よくわからないんですよね・・・。
とはいえ、やらないと終わらないので、やってみるわけなんですが、自分なりにやってみて、解釈ができていない時、よくあるコメントがこちら。→「情報の羅列で、解釈になっていない」
自分では、解釈しているつもりなので、解釈になっていない、と言われても困るわけで・・・。情報の羅列を、解釈に変えたいあなたへ。
私は、アセスメントについて説明する時、大きく3つにわけています。
アセスメントをする、というのは、
・解釈をする
・分析をする
・予測をする
ということ。今回は、このうちの「解釈をする」って何よ、という話をしようと思います。
数字で表す情報を解釈してみる
バイタルサインや、血液検査の結果など、数字で表すことのできる情報ってありますね。
これらの「解釈」はイメージしやすいかもしれません。
例1)
血圧;190/88mmHg
正常血圧;130(収縮期)mmHg未満、85(拡張期)mmHg未満 (メジカルフレンド社 看護学生のためのバイタルサインより)
解釈;基準値よりも高い→血管壁や心臓に高い圧力(負荷)がかかっていることを意味している
例2)
総たんぱく;5.8g/dl
基準値;6.7~8.3 g/dl (照林社 ケアに生かす検査値ガイドより)
解釈;基準値よりも低い→血液中のたんぱくが足りていないことを意味している
基準、標準、一般とされている数字と照らし合わせて、どれほどの差があり、それが何を意味しているのかを確認する、ということを行なっています。
数字は、6とか、3というか、いう数字は、値そのものであって、値自体に意味はありません。それを、どのように捉えるか、によって、初めて意味が生まれます。
例えば、医療従事者にとって、総たんぱくが5.0g/dlというのは、基準値より低く、それは、たんぱくが足りていないことを意味している、ということがわかるわけですが、これを知らない方にとっては、ただの数字です。
総たんぱくが5.0g/dlなので、十分な栄養をとるようにすすめる、と言われても、総たんぱくが5.0g/dlだと、なんで十分な栄養を取る必要があるの? 総たんぱくが5.0g/dl、と、栄養とは、どんな関係があるの?という疑問がわくことも考えられます。
数字そのもの=情報(データ)、数字をどのように捉えたか=解釈、ということです。
つまり、情報としての数字だけが並んでいる場合、情報の羅列、ということになります。
ここに、それらの情報をどのように捉えたのか、が加わって、初めてアセスメントとしての「解釈」になる、というわけです。
数字以外で表す情報を解釈してみる
数字の解釈は、基準となるものさえ確認できれば「できる」ようになることが多いです。
むずかしいのは、基準となるものや、捉え方が、はっきりしないときです。
例えば、毎食4割、食事を摂取している、という情報があったとします。
食事療法としての指示が、10割摂取、という場合、10割と4割を比べて、「指示量を摂取できていない=少ない(解釈)」と判断できます。
4割という数字だけをみると、少ないといえそうですが、満足感や食間の空腹感、栄養を評価する血液検査の結果などと合わせて、総合的に判断すると、4割という量は、現在のその方にとってちょうどよい、ということになることもありえます。
ほかには、患者さんの発言や様子(行動)などを情報として扱う場合、解釈に迷うことがあるかもしれません。
「自分の体のことは、自分が一番よく知ってる。だから、こんな管理は必要ない」必要な健康管理について説明したところ、患者さんからこのような発言が聞かれたとします。
「自分の体のことは、自分が一番よく知ってる。だから、こんな管理は必要ない」これが、S情報だとします。この情報を、解釈する、とは?
解釈がないまま、結論を出すというのは、例えば、こちら↓。
「自分の体のことは、自分が一番よく知ってる。だから、こんな管理は必要ない」という発言を確認したので、健康管理指導を続ける、
「自分の体のことは、自分が一番よく知ってる。だから、こんな管理は必要ない」という発言を確認したので、健康管理指導を見送る、
「自分の体のことは、自分が一番よく知ってる。だから、こんな管理は必要ない」という発言を確認したので、健康管理指導の時期を検討し直す。
どのような結論になった場合も、その結論になった理由を確認したいところです。そこに、判断した人の「解釈」が潜んでいるからです。
患者さんがこう言われたので、これをする。ではなく、
患者さんが言われたこの発言を、私はこのように解釈したので、これをする。アンダーラインの部分が必要になります。
3つのうちの、どれが正解なのか、は、上の文章からは判断できません。なぜ、その結論になったのか、その理由となる「解釈」、つまり、患者さんの発言を、どのように捉えたのか、の部分がポイントになります。
数字の解釈のときのように「基準、標準」として使われるものに、看護理論、があります。看護理論をものさしにして、それと現状(発言)とを比べて、発言が意味することを考えよう、というわけです。
例えば、今回の健康管理にまつわる発言について。
変化のステージモデル(トランスセオレティカル・モデル)、では、人の行動変容について、5つのステージを通ると説明しています。
Gakken 看護診断のためのよくわかる中範囲理論 より
トランスセオレティカル・モデルでは、人の行動変容を「無関心期(前熟考期)」→「関心期(熟考期)」→「準備期」→「行動期」→「維持期」の5つのステージを通るプロセスであると考える。人に行動変容を促す場合は、その人のステージに合ったはたらきかけをすることが勧められている。
続けて、それぞれのステージによって、適したはたらきかけが紹介されています。
先ほどの発言を、この5つのステージと照らし合わせたとき、この発言から、対象は、この5つのステージのうちの、このステージに該当すると言えそうだ。なので、このモデルで推奨されている、こんなはたらきかけが適しているんじゃないか、と考える。
このうちの、「この発言から、対象は、この5つのステージのうちの、●●ステージに該当すると言えそうだ=つまり、関心がない、とか、つまり、準備ができているとか=発言が意味していること」これが、さきほどの発言の解釈、になります。
すっごく乱暴ですが、もっとわかりやすくいうならば、ある情報を取り上げて、「それって、いいの?」「それって、よくないの?」を考える。
いい場合も、よくない場合も、そう判断した理由があるはずで、その理由が、解釈のヒントになります。(実際には、いい、よくない、の2つの選択ではなく、ちょっといいとか、ちょっとよくないとか、微妙な判断になることもあります)
情報の羅列を改善するには
この流れですと、情報の羅列を改善するには、「解釈」をしましょう、ということになるかと思うのですが(私も、そのつもりだったのですが。苦笑)、もちろん、解釈をすれば、看護過程の次のステップにスムーズに進みやすいわけなんですが、ここまで解説をしてきて、気づいたことがありまして。
できあがったアセスメントを見て、「情報の羅列になっている」と気づくとき、情報が解釈されていない、ということも、その原因のひとつなんですが、実は、それだけが唯一の原因ではありません。
他のアセスメント(分析、予測)ができていないとき、も、情報の羅列になる可能性はあります。
さらに、もう一つ気づいたのは、解釈という内容が、アセスメントの中になかったとしても、必要な分析と必要な予測がされているとき、解釈がされていないことに気づきにくい、ということ。
つまり、解釈という内容が、もしアセスメントに含まれていなかったとしても、必要な分析の内容と、必要な予測の内容が含まれていれば、看護診断〜看護計画につながるアセスメントとして成立する、といえそうです。
言い換えると、解釈がされていないアセスメントで、「情報の羅列になっている」と指摘されるとき、解釈もされていない上に、分析や予測が十分できていないことが多い、ということが考えられます。
ので、もし、「解釈」を単独で取り上げて、その作業がよくわからないとき、ひとまず解釈という作業を飛ばして、分析、予測に進んでいっても良いかと思います。^^
なくてもいい、とは言いませんが、なくてもアセスメントとして成り立つことはありそうです(それって、なくてもいいって言ってないかな。苦笑)
ただし、学校所定の記録用紙に「解釈」を書く欄があるときは、がんばって書いてください。<(_ _)>