紙上患者事例で看護アセスメントをするときの情報整理〜入院までの経過〜
紙上患者事例に登場する「入院までの経過」は、ゴードンの場合「健康知覚・健康管理パターン」に分類します。
「入院までの経過」というのは
15年前より、高血圧の治療及び経過観察のために定期的に受診していたが、外来受診時、意識障害を起こし、そのまま緊急入院となった。
10年前に心不全の治療のため入院した際、日常生活における健康管理の指導を受ける。退院後、3ヶ月ほど定期的に受診をしていたが、症状が安定してきたため、定期受診の頻度を自身の判断で調整するようになった。今回、1週間前からせきや体動時の息苦しさなど症状を認めていたが、「かぜかと思った」と受診を見合わせていた。その後、症状が悪化し、夜間臥床して休むことができなくなったため、本日受診し、心不全の悪化のため治療目的で入院となった。
など、患者さんにまつわる情報が書かれた用紙の中でも、冒頭に登場する情報ですね。
入院に至るまでの経過を指します。入院に至るまでの間に、どんなことがあったのか、という内容が含まれますが、ここに、患者さんの「健康観」があらわれることが多いです。
どのような状況・状態を、どのように判断したのか。それによって、どのような行動をしたのか。ここには、すべて患者さんが、ご自身の健康をどのように捉えているかという考え方が反映されます。
先ほど挙げた例でいうと、
- 定期受診をしていた →健康に関心があり、必要な管理ができていた、とか
- 定期受診の頻度を自身で判断するようになった →症状が出ていないときは、健康に注意が向きにくいのかもしれない、とか
患者さんの、ご自身の健康への関心、捉え方、および実際にどのように健康管理をしているのか、ということが含まれる内容であるため、「健康知覚・健康管理パターン」で扱う、というわけです。
この情報をアセスメントにどう使うのか
自身の健康に対して、こういう考え方を持った方なので、こういう関わり方が良いだろう。自身の健康に対して、こういう方法で管理をされる方なので、こういう関わり方が良いだろう。という具合に、健康管理が必要な場合、患者さん自身によって、適切に健康管理をするには、私たちはどのように関わると良いのか、ということを検討するときの手がかりにします。
同じ心不全という診断を受けた患者さんで、同じように、塩分制限が必要な患者さんの場合でも、「こんな苦しい思いは二度としたくありません。せっかく元気になったのですから、これからは健康に元気に暮らしていきたいです。自分の健康は自分で管理しないといけないですね」と考える方と、
「ちょっとぐらい塩分を制限したぐらいで、何かが変わるとは思えないんだけどね。家族の分のごはんも作るとなると、自分の分だけ塩分を調整するって、考えただけでも大変。どうしても、守らないといけないの?」と感じている方とでは、
必要な看護は異なります。
何から伝えると良いのか、何に焦点を当てて関わると良いのか、おひとりで学習してもらうのが良いのか、ご家族の方にも一緒に話を聞いたり、うかがったりさせてもらうのが良いのか。どんなペースで進めると良いのか、どんな方法で行うのか良いのか。
「適切な健康管理ができる」というゴールは同じでも、そこにたどり着くまでの、最適な方法は、患者さんによって様々です。
何を指導するのかだけでなく、どのように指導するのかがポイント
健康知覚・健康管理パターンでは、患者さん自身によって、必要な健康管理ができるよう、患者さん自身に学習していただく必要がある場合、学習を支援するという看護が必要になります。
ここで大事なことは、「何を学習するのか」ということだけでなく、「どのように学習するのか」ということ。
「●●さんならではの最適な健康管理方法」を検討するために、●●さんの現在の状態・状況などを判断する、これが健康知覚・健康管理パターンでアセスメントすること、です。
そのためには、●●さんには、どんな健康管理が必要で、それを適切に管理できているか、だけでなく、どんな思いで、どんな考えで、実際にどのように取り組んでいるのか、取り組もうとしているのか、などを把握することが大切です。
↑これが、個別性のある看護(計画)、につながります。