ずれない看護計画を立てるための条件
いつも、ありがとうございます。
ローザン由香里です。
看護計画がずれる、とは、患者さんの状態、状況にあっていない看護計画。
なぜ、このようなことが起こるのか?
- 患者さんの状態や状況を、十分に判断しないまま、ケア(看護計画)を決める
- 患者さんの状態や状況を、十分判断したにもかかわらず、その内容を無視して、ケア(看護計画)を決める
多くの場合、このどちらかに当てはまります。
わかりやすく言い換えると、「思い込みな看護計画」になってしまうとき、自分の知っている範囲で結論を出している。プラス、その結論の妥当性を確認しない、ことが多いです。後者がポイント。
これがいい!と思いつくのだけれど、なぜ、それがいいのか、までは説明できない、という感じです。
というわけで、メルマガ読者さんに、「思いつく」どまりの思考か、「思いついた後、なぜそれがいいのかまでを確認できる」思考なのか、「思考のクセ」を確認するワークに取り組んでいただきました。
ワークの内容は、こちら。
1、喜ばせたい人を決める
2、喜ばせる準備をする
3、準備したことを実行する
「これで喜んでもらえるだろう」はあくまで仮説
今回のワークのゴールは、「相手が喜ぶ」ということ。
大事な点は、自分が何をしたか、どれだけ相手を思っているかではなく、結果として「相手が喜ぶ」という点です。
現状に対して、相手が喜ぶであろう何かをする。結果、相手が喜ぶ。ですね。
相手が喜ぶであろうことを想像して、何をしようかな、と考えるわけですが、何をしようかと考えたり、決めたりしている段階での結論は、あくまで「仮説」
この仮説、どうやって生まれたのでしょうか。
- 人は、どうすると喜ぶのかについて、本を読んだ?
- 人は、何をされると喜ぶのかについて、ネットで調べた?
- 人は、どんなときに喜ぶのかについて、誰かに聞いた?
そうではなく、何よりも「喜ばせたい相手のことを考えたはず」です。
なぜなら、喜ばせる相手は、「特定のある個人」だからです。その人が喜ぶためにすることを検討する必要があるからです。
つまり、特定のある人が喜んでくれるために何をするのか、その仮説が妥当であるためのポイントは、現在の相手の状態や状況を、どれほど適切に把握できているかどうか、という点です。
今回は、喜ばせる対象を「身近な人」で設定した人が多かったので、かんたんにワークが進んだかと思います。ほとんどの場合、自分の頭の中だけでワーク2までができてしまったのではないでしょうか。
この対象を、「見ず知らずの人」に置き換えるとわかりやすいです。見たことも、話を聞いたこともない、ある人を喜ばせてください、と言われたら、何よりその人のことについていろいろと知る必要があるはずです。なぜなら、何をするかではなく、結果として「その人が喜ぶこと」がゴールだからです。
ずれない結論になっているかどうかを確認するには
介入によって、現状がどう変わるのかを確認する。
介入によって、現状のどんなことに、どんなふうに影響して、何がどう変わるのか。その変化は、イコール喜ぶことになるのか、を確認する。
ずれた看護計画を立ててしまう、看護計画に個別性を出せない場合、ここが弱い可能性が高いです。
例えば、対象が夫だとします。いつも忙しくしているので、時間を作ってあげよう、と何かの仕事を代わりにやってあげたとします。
結果として、彼に余分な時間ができます。注目したいのは、それで彼が喜んだかどうか、という点。もちろん、奥さんの思いがこもった行い(おこない)ですので、喜んでくれるとは思うのですが、今回は「思考」についての説明ですので、気持ちや思いはすこし分けて考えますね。
彼が、忙しいことに不満を持っていて、少しでも余分に時間があればいいのにな、と思っていたのであれば、「喜ぶ」という結果につながりやすいです。
その一方で、忙しそうに見えたけれど、本人はそれを不満を感じていない。むしろ、予定したことをスピーディに着実にこなすことで、達成感がある、のだとしたら、忙しく見えるように振舞っていたことを申し訳ないと思う、ということもありえます。
このように、喜ばれる結果と、喜ばれない結果が生まれることに大きく影響するのが、現状把握です。
例の場合でいうと、現状を、
- 忙しいことに不満を持っていて、少しでも余分に時間があればいいと思っている と把握しているのか、
- 忙しそうに見えるけど、本人は限られた時間内でタスクをこなすことに達成感を感じている、と把握するのか、
によって、喜ばせる方法はまったくことなる、ということです。
もっと言うと、適切に現状把握ができているかどうかの前に、適切な現状把握ができるだけのデータ(情報)を持っているかという点が重要です。
ここでいう現状把握とは、看護過程でいうところの、アセスメントです。
ずれない看護計画を立てるための条件とは
アセスメントを使うこと、です。
アセスメントの中には、以下のことが含まれています。
ずれていない看護計画とは、看護目標を達成する看護計画、です。
看護目標とは、看護問題が解決した状態です。
看護問題とは、看護介入が必要であると判断した状態、状況のことです。これは、アセスメントによって確認できます。アセスメントとは、現在の患者さんの状態を判断する作業だからです。
では、このアセスメントを、ずれない看護計画をたてるために、どんなふうに使うといいのか、というと、
- 看護介入によって、現状がどう変わったのか、変わらなかったのか、解釈の結論を使って判断する(例;栄養不足を改善する看護介入をした時、総蛋白が5.8g/dl→低い、 食事摂取量3割→少ない、BMI20→低い これらの推移・変化をチェック)つまり、これらの事柄を看護計画の観察項目に入れる。
- 看護介入によって、現状を改善する際、改善するための方法として、分析で確認した原因・要因を取り除くことをケアに含める(例;栄養不足の原因が、食事摂取量が少ない、不安が強くて食欲がない 場合、これらにアプローチする)つまり、食事摂取量を増やすケア、不安を緩和して食欲への影響を減らすケアなどを、実施項目に入れる。
- 看護介入をしないことで起こりうる状況について、看護介入をすることで予防できているかを確認する(例;このまま食事摂取量が増えない場合、栄養不足に、他の因子がくわわり褥瘡を起こしやすいというとき、褥瘡の予防のための観察をする)つまり、栄養状態、褥瘡の予防に関する観察事項を観察項目に、実際に予防のために行うことを実施項目に入れる。
アセスメントは、アセスメントを完成することがゴールではありません。
アセスメントの結論は、現在の状態を把握することです。
アセスメントをする目的は、その結論から、看護介入の必要性を見極めて、必要な場合何をするのかを検討する根拠にすること、です。
ずれない看護計画を立てるために必要な条件、それは、
- 適切なアセスメント(現状把握)をすること
- アセスメントの結果を看護計画に反映させること
看護計画がずれていると指摘をされて困っている人は、この2つの視点で見直しをされると良いです。
アセスメントのやり方と書き方を、実演で説明している教材;看護アセスメントマニュアル くわしくは>>>こちらから。